2004年 08月 21日

トラボケよ永遠に…

TBボケチャレンジ枠決定戦 参加作品



「うわーん、だれかたすけてー!」

私は叫びたい気持ちで一杯だった。
だが大声を出すのは禁物だ。

誰かが玄関の扉を叩いているからだ。

「電報でーす。」

確かに電報配達人のように聞こえるが、声色をまねた借金取りかも知れない。
ここは居留守を使うべきか…

と、部屋の電話が鳴った。
吉報かも知れないが、やはり借金取りからかも知れない。
電話に出れば、玄関の男に居留守を使うこともできなくなる。

私は本当に、助けを求めて叫びたい気持ちで一杯だった。


元はと言えば、若い頃、「トラバでボケましょう」という企画に参加したことが私の人生を変えたのだ。
あのころは、ただ、創作することが楽しくて仕方なかった。

その後、トラボケは大規模になり、多額の賞金もかかり、芥川賞・直木賞と肩を並べるような大きな賞と化した。

私はプロのトラボケ士となった。
ほぼ毎週開かれるトラボケ大会に出場し、賞金をもらって暮らすのだ。

だが、鳴かず飛ばずの日々。
参加賞だけでは暮らしていけず、生活費を借りているうちに、借金は膨大なものになってしまった。
こうして今日も借金取りに怯えて過ごしている。


しかし、今の私にもひとつだけ希望がある。
今日はトラボケ大賞の発表の日なのだ。

優勝できれば借金など一気に返済してお釣りがくる。
確認するにはパソコンで結果を見ればいい。

しまった、パソコンは先日 質に入れたままだ。

結果は、電報や、電話でも通知されるのだが、今はそれらに出られる状況ではない。


万事窮す!


そのとき、押入れの中で何かの気配がした。

もしや!

大きな音を立てないように、しかし急いで 押入れを開け、中を探る。

あった!

ネコ型パソコン「ミィ」。

私がトラボケ士となって間もない頃にもらった新人賞で買った品だ。
ペット型パソコンが旧式になってからは、ずっと押入れの奥にしまったまま、存在すら忘れていた。

特にミィ型は、OSが大きくてメモリを食うわりに、動作が遅いと評判が悪かった。
まだバッテリーが生きていたとは。

首のうしろのボタンを押す。
ミィは「ミィ」と弱々しく鳴いて起動した。

背中を開いてディスプレイを出す。
「最新のトラボケ結果を表示して」
小声で音声入力する。

ディスプレイに結果が映し出されていく…

やった! 優勝だ!

これでもう借金取りなど怖くないぞ!

私は電話を取りながら、玄関のドアを開けた。

「トラボケの優勝、おめでとうございます!」

電話の相手と電報配達人の両方から同時に声をかけられた。
これでようやく下積み生活と おさらばできる。
一人前のトラボケ士として認められたのだ。


配達人が帰り、電話を切り、部屋には私とミィだけが残った。

思い起こせば、応募作品のほとんどをこいつで書いたんだっけ。
こいつに向かって夢中で口述筆記したものだった。
こいつは毎晩、文句も言わずに付き合ってくれた。

パソコンに人格など感じたことはなかったけれど、今思えば苦労を共にしてきた仲間のような気がする。

私のヒーローはお前だ。

旧式だから、もう使うことはないだろうけど、私を窮地から救ってくれたお前は、私にとってのヒーローだ。

そのとき、ミィの電源ランプが消えた。
充電しても直らなかった。
バッテリーが死んだのだ。
こんな旧型、もう交換部品もないだろう。

なぜか涙が頬を伝った。
私はミィを抱いたまま、部屋の中で一人、泣き続けた。いつまでも、いつまでも。



■□■□■□■□【TBボケチャレンジ枠テンプレ】■□■□■□■□
【ルール】
 お題の記事に対してトラバしてボケて下さい。
 エントリー期限は30トラバつく、もしくは8/22 21:00までとします。

 今回は特別ルールとして審査は投票制になります。
 エントリー期限終了後にエントリー作品一覧記事を企画元ブログにて
 公開しますので、そこに鍵コメントで投票して下さい。
 投票はTBボケにエントリーしていない方もぜひお願いします。
 詳しくはこちらの記事にて。
 http://earll73.exblog.jp/897195

 1stステージ最後のTBボケ!
 あなたの投票でグランドチャンピオン大会の最後のイスが決まります!
 
 ※誰でも参加出来るように
  このテンプレを記事の最後にコピペお願いします。

 企画元 毎日が送りバント http://earll73.exblog.jp/
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by himaohimao | 2004-08-21 15:18 | 企画参加


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