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2004年 08月 08日

天使のような奥様

第10回 トラボケ 参加作品


旦那は今夜も帰りが遅くなるらしい。
携帯に一言メール、
「古本屋に寄って帰る」
ってあったから。
趣味の郷土史研究もいいけど、あたしたち新婚なんだからね。
いいかげんにしてほしいわ。

特にこの新築の家を建てて引っ越して来てからというもの、夜は書斎にこもりっきりで、
古ぼけた本とにらめっこしてばかり。
呼びかけても
「ちょっと待ってくれよ。僕らを守る大事な研究をしているんだ」
の一点張り。守るってなによぉ。

旦那が留守のときに こっそり部屋に入って 本を開いてみたことあるんだけど、
紙魚っていうの? なんか小さなキモい蟲みたいのが見えたんで、
急いで閉じて、すぐ出てきちゃった。
それ以来、あの部屋に足を踏み入れたことはない。


で、ベッドでふて寝していたら、家がミシミシッときしむ音がした。
ま~たあいつらだ。
窓から外を覗くと、やっぱりいた。
30cmくらいの小鬼が数匹づつ 家の柱に取り付いて、一生懸命ゆすってる。
冗談じゃないわよ。毎日毎日やって来て。
新婚早々無理して買った家を壊されてたまるもんですか。
ローンだってあと30年も残ってるのよ!

前に旦那に相談したときも、
「それは家鳴りっていう日本古来の妖怪だよ。それ以上の悪さはしないから放っておきなさい」
なんて言うばかり。
こうなりゃあたしがなんとかするしかないわ。

布団叩きを片手にテラスに飛び出す。
手近な小鬼からパンパン叩いて追い出してまわる。
こいつら弱っちいし、いつものことだから、怖くともなんともない。
ただウザいだけ。
だって、ただ逃げ回るだけで、やっつけられないんだもん。

いつもはこれで終わりにしてやるんだけど、今日は違うぞ。
こっちには援軍がついたんだ。


昨日、裏庭でボーッと洗濯物を干していたら、急に空が曇って、雷まで鳴り出したのね。
アチャー、洗濯物乾かないやって思ってたら、空から白鳥みたいな羽根のはえた女の人達が
降りてきて、話しかけてきたの。
白人見たのは初めてってわけじゃなかったけど、あんな美人が集団で来ると驚くわよ。
目は青っていうより空色、髪はプラチナブロンドってやつ?
おまけに輝く銀のヨロイを着て、長い槍まで持ってんのよ。カッチョイー。

あたしの目をじっと見つめて
「私たちは悪い悪魔を退治するために旅を続けています」
なんつって。
「怪しいやつを見かけたら、この笛を吹いてください。すぐに駆けつけますから」
って、石でできた小さな笛をもらっちゃった。丸いオカリナみたいな感じかな。
かわいいから、穴に紐を通して首にかけてるんだ。


で、今こそ それを使うときでしょう。
笛を取り出し、それらしい穴に唇を当てて思いっきり息を吹き込む。
あれ? なんかスカスカした小さな音しか出ないな。

と思ったら、どこからともなくオォォォンって苦しむような声がして、急に地面が揺れ出した。
いや、揺れるっていうより波打つ感じ。
もう立ってられないって思ったとき、身体が浮いた。

見ると昨日の あの人達が両脇を支えてくれて、あたしは空に浮かんでいた。
「すごいすごい、空飛んでる~」
「今はそれどころじゃありません。あれを見てください」
指差す方を見ると、ぎゃっ、あたしの家が黒い顔になってるじゃない。

もっと正確に言うと、あたしん家のご近所一帯が黒い霧に包まれてて、
その霧が全体で大きな顔になってんのね。
まるで巨人が地面から顔をのぞかせてるみたい。

「あれは悪魔の手下です。退治しましょう」

気がつくと、あたしにも白い羽根がはえていた。
新築ローン30年のあたしたちの家を壊されてたまるもんですか。
行くわよ~。


「待った!」
あれ? 横から誰かが割って入ってきた。
見るとカラスのような黒い羽根をはやした男の人。
顔は… うわぁ、ウチの旦那にクリソツでやんの。
てか、旦那じゃないの! あなた、そこで何やってんのよ。

「あれが悪魔です!」
援軍の人たちが叫ぶ。

悪魔? ならもうちょっと怖そうな顔してるんじゃない?
それとも すんごい美形とか。
それが旦那ってどうよ。
凄味がないったらありゃしない。
はっきり言って、負ける気がしない。

「んじゃあ あなた、いくわよー!」
布団叩きをかまえると、旦那はあわてたように
「待った待った。俺は悪魔なんかじゃない。
 このあたり一帯には、古来土地神様が憑いていてだなぁ、
 代々この土地を守っていてくださったんだ。
 それにお前に取り憑いているのはワルキューレという北欧の死神の一種だぞ。
 最近では、落ち着く場所を求めてさまよってるって噂だ。」

コライトチガミサマってなによー。漢字いっぱい使われたって わかんないわよぅ。
援軍さんたちも
「だまされてはいけません。あれは悪魔と その手下です」
って言ってるしー。

「まてまて、この古文書にだな」
いやーん、旦那ってば、カビ臭い本を開いて なにやら言ってるんだけど、
その本から例の蟲がボタボタこぼれ落ちてるの。
それも10cmくらいの大きさのヤツが。

それに待て待てってうるさいわね。
あたしが何か頼むたびに いつもいつも「ちょっと待って」って本に夢中で。
そんなにあたしの言うことが聞きたくないの。
そう、そんならいいわよ。あたしだって、あたしだってねぇ…

なんかだんだんハラ立ってきた。ええいやっちゃえ!
布団叩きをかかげて急降下。旦那をビシバシ叩いちゃう。

「うわっ、ちょっと待って、待っ」

かまうもんですか。えい、やあ!

「うわ、痛っ、ちょ、マジ痛っ、うわー」

あはは、旦那ってば、空から落ちちゃってんの。
って、このまま落ちるとあたしん家に落下しちゃうじゃない。
冗談じゃないわ。
あんな蟲を持ち込まれて、大繁殖でもしちゃったらどうしてくれるのよ。

あたしも急降下。ズサー。庭にみごとに着地。
黒い顔の形をした霧のなかに入っちゃったことになるけど、あたしたちの家を守るためだもん、
そんなこと言ってられないよね。
それに霧の中って、ほんわか暖かくてなんだか気持ちいい。

先に落ちてた旦那は、どこか打ったらしく、しゃがみこんで うーうー唸っている。

空から声が響いてきた。
「今がチャンスです。悪魔を打ち滅ぼすのです」

そんなこと言われてもねぇ。相手は旦那だし、動けそうにないし、庭だから蟲も大丈夫だろうし。

「ならば笛を吹きなさい。その音色には悪魔の手下を弱らせる効果があるのです」

あーもううるさいわねぇ。あたしに命令するんじゃないわよ。
旦那にもそんな口きかせたことないんだからね。

あたしが美女軍団と睨み合っていると、その間に旦那が回復したらしく、
古本を開いてなにやら唱えはじめた。

「オンムラクモツチヒメノコニシテワガソタケルノミコトニカシコミカシコミオンネガイタテマツ……」

えーいあなたもウザいわね。布団叩きでひっぱたく。
なにが「あ痛」よ。
庭に座り込んで わけわかんない本 声に出して読んでるんじゃないわよ。


そんなことを繰り返しているうちに、美女軍団の方がラチがあかないと判断したらしく、
空のかなたへ帰っていっちゃった。

すると霧も地面にしみこむように消えていって、なんだかスーッと気分もよくなって……



目が覚めた。寝室に、朝の光が差し込み始めている。
もう一度寝るか。
いつのまにか隣で寝ていた旦那がうなされて寝言を言っている。

「俺たちの… ローンが… 守らなくちゃ…」

ちょっと、どうしたの。
軽く揺さぶると、旦那はガバッと起き上がってこう言った。

「うわあぁっ! いやぁ、いまのは怖かった・・・」

「どうしたのよ。いったい何が怖かったの」

「うわっ、もうぶたないでくれ!」

「失礼ねぇ。なに寝ぼけてんのよ」

旦那はボーゼンとした顔で あたしをしばらく見つめたあと、真顔に戻ってポツリと
「いや、なんでもない」
とだけ言った。

ホント、人騒がせなんだから。
でもやっぱりあなたが好き☆
キスしてあげると、むこうもあたしに覆いかぶさってきた。


ちょっとあなた、なに見てんのよ。
あなた、あなたのことよ。ここからはオフレコよ。
カーテン閉めるからね。じゃあね。

シャッ

(暗転。おしまい)



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【ルール】
 お題の記事に対してトラバしてボケて下さい。
 審査は1つのお題に対し30トラバつく、もしくはお題投稿から48時間後に
 お題を出した人が独断で判断しチャンピオン(大賞)を決めます。
 (自分自身のお題の記事にトラバして発表)
 チャンピオンになった人は発表の記事にトラバして次のお題を投稿します。
 1つのお題に対しては1人1トラバ(1ネタ)とします。
 お題が変われば何度でも参加OKです。
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 企画終了条件は
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 参加条件は特にないのでじゃんじゃんトラバをしてボケまくって下さい。

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 企画元 毎日が送りバント様 http://earll73.exblog.jp/
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萩尾望都の『あぶない丘の家』の 最初のエピソード「あぶないアズにいちゃん」を
モチーフにしました。

奥様、読んでおられるといいなぁ……
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by himaohimao | 2004-08-08 07:27 | ショートショート
2004年 08月 05日

叱られる男

第9回トラボケ大賞 不参加 作品


 お題:「大事な局面でまた遅刻ですか?」



「あいつだ、あいつを呼べ!」

編集長の怒りは心頭に発していた。

「彼はまだ帰社していませんが」

傍らにいる、スーツを着た聡明そうな女性が言った。

「まったくあいつときたら! 総力をあげてこの件を追えと言っているのに!」

編集長はゴマシオ頭を逆立てて怒鳴っていた。

「この件の写真つき記事が今日の夕刊に載せられれば、大スクープ間違いなしなんだぞ!」

「無理ですよそんな。カメラは彼が持ってるんですし。」

女性が冷静に指摘する。

「だからこうして我慢して待ってやってるんじゃないか! だが物には限度というものがあるぞ」

編集長の怒りが頂点に達しようとしたそのとき、部屋の扉が開いた。

「やあ、遅れてすみません」

大柄な身体をスーツに包み、フチの太いメガネをかけた男はヘラヘラと笑って言った。


「クラーク・ケント! お前は今まで何をしていたんだ! いつも大事な局面に遅刻しおって!」


新聞社デイリープラネットの編集長ペリー・ホワイトの怒りが爆発した。
瞬間湯沸かし器とあだ名される彼のことだ。この小言はしばらく収まらないだろう。

クラークとコンビを組んでいる 傍らの女性、ロイス・レーンはため息をついた。

「クラークったらいつもこうなんだから。私たちが追っているスーパーマンとは雲泥の差ね」



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ウルトラマンかスーパーマンネタ、絶対出てくると思ってました。
で、両方、同じパターンで書いておいたんですね。

ところがその後、別の話を思いついたので、そちらで参加させていただきました。

結局、ウルトラマンネタは出ましたが、意表を突いたアプローチで、このアイディアとは
かぶっていないと自分で勝手に判断。

なんとかこの話にも日の目を見せてやりたいと思い、わがままとは知りつつも、
スーパーマンの方を、大会終了後にトラックバックさせていただきます。
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by himaohimao | 2004-08-05 05:00 | ショートショート
2004年 08月 02日

無理のある勤務

第9回トラボケ大賞 参加作品

お題「大事な局面でまた遅刻ですか?」



朝、俺が目覚めてみると、もう出社時間が近かった。

「いかん、遅刻しちまう」

あわてて身支度を整え、家を飛び出す。

昨夜もついつい遊んじまった。朝つらくなるのは分かっているんだが、夜遊びはやめられない。

今はとにかく走るしかない。

が、このままでは、どうしても遅刻だ。

今月にはいってからだけでも、もう何回も遅刻している。

これ以上遅れると、何を言われるか分からない。

前に課長が怒っていた様子からすると、ひょっとしたら、減給処分もありうるかも。

冗談じゃない。そんな目に遭うために働いてるんじゃないぞ。

脇腹にじっとりと汗がにじむ。気持ちが悪い。

急いで走ってはいるのだが、俺の短い足では、思うようにスピードが出ない。

手足も汗ばんでいるのが分かる。汗を拭かねば。

ハンカチは、あれ、ハンカチが見当たらない。ハンカチはどこに入れたっけ。

ああ だめだ、今日もまた遅刻か。俺は思わず目をつぶった。


俺はうなだれていた。今朝もたっぷりと課長のお小言をいただいてしまったのだ。

「我が社はじまって以来のルーズさだぞ!
 今朝は重要な商談があるというのに、今後の業績を左右する大事な局面でまた遅刻するなんて!
 聞いてるのかね、君は! コラ、耳を縮めるんじゃない!」

さんざんな言われようだった。脇腹から、さらに冷や汗をかいてしまった。

悄然として自分の席につき、俺は ため息をついた。


向かいの席のコウモリが、そっと話しかけてくる。

「ゾウ課長のやつ、言い過ぎだよな。毎朝遅刻するなって言われても、僕たち夜行性動物にはつらいよ」

隣の席のモグラも、同情のまなざしで言う。

「そうだよな。俺たちは こんな動物商事に勤めるより、夜の仕事の方が合ってるのかもな。動物深夜バスの運転手とかさ」

彼らの思いやりのある言葉に、無言で短い手を振って応える。


俺、ハムスターの 大福ハムすけ は、ほお袋からハンカチを取り出すと、脇腹の汗をぬぐった。


あ、ここにハンカチ入れてたのか。



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by himaohimao | 2004-08-02 20:26 | ショートショート
2004年 08月 01日

サル山にほえろ!

単発新企画! ボスからの指令TB 参加作品


【お題】
>>今日未明、はにかみ動物園の猿山の猿12匹が忽然と姿を消した。
>>猿たちはまだ見つかっておらず、消息は不明。
>>夜には全ての猿が檻に入れられるのでそこから姿を消す事は不可能。
>>もちろん、鍵はかけてあり内側からは開かない仕組みだ。
>>朝、飼育員が檻を見に行くともぬけの殻だったそうだ。
>>現在分かっているのはこれだけだ。
>>事件の真相、犯人、犯人の動機をレポートしてくれ。


ボス、張り込みご苦労さんです。交代しますよ。
いくら調べても、やはり鍵は開かないみたいですね。

お、ボス、若いモンが差し入れを持って来ましたぜ。一服してください。

あれ? お前、見たことない顔だな。
なに、今日入ったばかりの新入りだぁ?

そうかいそうかい。新入り早々ボスに差し入れたぁ気の利いたヤツだ。
じゃあまずお前のアダ名を決めなきゃならねぇな。

不思議そうなツラしてるな。
新入りにはまずアダ名をつける。それがここでの常識なんだよ。

名前なら丈二と言います?
いや名前じゃない。アダ名だよ。ヤマさんとか、ゴリさんとか。

ええい、めんどくさい。おまえのアダ名はジョージだ。
ジョージで決まり。

え、ジョージ、何を言ってるんだ。飼育係は黄色い帽子なんてかぶってやしないぞ。
ましてや おじさんて歳でもない。ありゃもうお爺さんだな。

あ、ジョージ、なにしてるんだ。扉の鍵なんかいじって。
あ、あ、なんてこった。うおぉぉぉ。


ボス!ボス! ジョージのやつが、扉を開けちまいましたぜ!
待ちに待ったこの日がやってきましたぜ!


こうして、この日、ボス猿を含む12匹の猿たちは、動物園を脱走し、姿を消した。


翌日、動物園内には、黄色い帽子をかぶったアメリカ人の青年が、誰かを探して叫ぶ姿が見られた。
「ジョージ! キュリアス ジョージ!」と。


さあ、物語を始めましょう。

『ひとまねこざる』
これは、おさるのジョージです。
黄色い帽子のおじさんに連れられて、アフリカからやってきました。
ジョージには困ったクセがありました。
人間のすることなら なんでもマネしたがるのです。
それこそ、鍵開けでもね・・・

お話の続きは、こちらでどうぞ。



■□■□■□■【ボスからの指令TBテンプレ】□■□■□■□
【ルール】
 ボスの指令をあなたが捜査員となって解決してください。
 事件の真相、犯人、犯人の動機のレポートをトラバして下さい。
 あとは自由!
 今回のボスの指令はこちら
 http://earll73.exblog.jp/769630
 
 捜査期限(トラバ期限)は1週間です。
 8/5まで。
 それでは健闘を祈る!

 ※このテンプレを記事の最後にコピペして下さいね。

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by himaohimao | 2004-08-01 07:16 | ショートショート
2004年 07月 23日

おつかい

【第8回トラバでボケましょう!】 参加作品


「さあ、お弁当ができたわよ。パパに届けてきてちょうだい」
ママがぼくに言った。
「はい、こっちがあなたの分よ」
「わーい、これだね。行ってきます!」
ぼくはママからお弁当と飲み物を受け取ると、家を飛び出した。

パパが働いているところは遠い。
だけどまだ朝ごはんがすんで、パパが出かけてからそんなに時間が経ってない。
寄り道しても、お昼までにはじゅうぶん間に合う。

ぼくはいつもの場所に行ってみることにした。


やわらかい草地を踏みしめながら歩く。
前にいたところは こんなに地面がやわらかいところはなかった。
外を歩いても咳が出ない。ホコリが少ないせいかもしれない。

「ここに引越したのは、あなたの体のためでもあるのよ」
ママの言葉を思い出した。
たしかに、ここに来てから体が軽い。あんなにいつも疲れてばかりいたのが嘘のようだ。
ぼくは走った。まるで羽根でも生えたかのようにビュンビュン走れる。
心臓がドキドキして、呼吸が速くなるのさえ気持ちいい。

草地を横切り、森を抜けるといつもの場所だ。
大人からは、ここに来ちゃいけないって言われてるけど、ぼくはよくここに来る。

ここの地面は固い。前にいたとこみたいに。
ここの建物はぼくの家より大きい。だれも住んでいないけど。
「廃墟」って言うんだと、パパは教えてくれた。
「こんな田舎だもの、しょうがないわよね」
とママが言っていた。

古くなった建物に入っちゃ危ないってことは知っているので、ぼくは外の壁にもたれて休んだ。
一人で静かにしていると、いろんな音が聞こえてくる。
風の音、虫の声、鳥のさえずり。
ぼくはこの音が好きだ。この風が好きだ。この場所が好きだ。
そして生き物たちが好きだ。
だって前の所にはいなかったんだもの。


太陽が高く登ってきた。そろそろ行かなくちゃ。パパが待ってる。
ぼくはまた走った。森を抜けて草原に戻り、パパのところへ。

息が切れて走れなくなって、のんびり歩いているうちに、パパが働いているところに着いた。
ぼくの姿を見つけて、作業していたパパが手をふった。
「おーい」
ぼくも叫ぶ。
「お弁当もってきたよー」
「そうか。じゃあお昼にするか」
「うん」
パパのとなりに、ぼくも座る。ぼくらは、ママが作ったお弁当を取り出して、2人で一緒に食べた。

「パパ、おいしかったね」
「そうだな。ここは空気がいいからな」
微笑んでパパが言う。
「お前はここが気に入ったようだな」
「うん、大好きだよ。パパはちがうの?」
「そうだなぁ。ときどきは、前に住んでた所が懐かしくなることもあるなぁ」
パパは空を見上げて言った。ぼくもつられて空を見る。

「パパ、どうして空が青いの?」

パパは真っ赤な3つの目でぼくをじっと見て言った。
「それはね、この星の大気の成分が、私たちの母星とは違うからなんだが、お前に分かるかなぁ」
そう言うと、パパは3本目の腕で、ぼくの頭をなでた。

「さ、もうひと働きしなくちゃな」
「ぼくも手伝うよ」
ぼくらは一緒に立ち上がると、移民してきた惑星を開拓するべく、環境改造マシンの方に向かって歩きはじめた。
パパがポツリとつぶやいた。

「パパはやっぱり、空は赤い方が好きだなぁ」


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by himaohimao | 2004-07-23 00:37 | ショートショート
2004年 07月 21日

灯台の幽霊

初めから嫌だったのだ。心霊スポットに行くなんて。
彼女が強引に誘うから、仕方なくついて来たのだ。

昼一杯かけて列車に乗って、こんな田舎の漁村まできて、小さな旅館に宿を取り、遅い夕食を摂ったらすぐに夜道を強行軍である。
Tシャツからむき出しになった腕が、さっきから蚊に食われている。もういいかげんにして欲しい。

「おい、その灯台とやらは、どこに現れるんだい?」
たまりかねて、彼女の背中に問いかけた。
「もうすぐよ。この小道をもう少し行って、松林を左に抜けると見えるはず。」
元気な声が返ってきた。
左手に持った地図を、右手の懐中電灯で照らしている。
その照り返しが映し出す彼女の横顔は、いつになく生き生きとして見えた。


事の起こりはこうである。
オカルト好きな彼女が、また新しい情報をクチコミで仕入れてきたのだ。
田舎の漁村に1年に1度、灯台の幽霊が現れるというのである。
その漁村はさびれており、今では漁に出る人もいなくなったため、古くなって危険な石造りの灯台は、数年前に取り壊されてしまったのだ。
しかし、毎年 お盆になると、一晩だけ、姿を現すのだそうだ。
彼女が言うには、昔を懐かしがって現れるということだった。

「その日はお祭りもあるしさ~、ね、行こうよぉ」

石でできた建物が、意識を持つなんてありえない。
そんなものに興味を抱くなんてどうかしている。
そんな僕の反論は、いつものごとく却下された。
その挙句が この有様なのだ。


「どうせまた、何も起こりゃしないよ」
僕の言葉に彼女が口を尖らせる。
「あなたってば、ホントに夢がないんだから」
真っ暗な夜道を歩きながら、彼女がため息をつく。
まあいい。真偽のほどは、すぐに分かるはずだ。

「ここよ。ここを左に曲がるの。」
曲がると言ったって、別れ道などどこにもない。
彼女は強引に松林に分け入ってゆく。
僕もあわてて追いかけた。
こんなところに懐中電灯ひとつで置いていかれたのではたまったもんじゃない。
朝まで蚊に食われ続けることになる。

顔といわず腕といわず、松葉に叩かれながらしばらく行くと、突然 視界が開けた。
目の前の地面が上り坂のまま先細りになり、岬になっているのだ。
その下には、海。
そして岬の突端には、月の光に照らされて、確かに、古い石造りの灯台が建っていた。

おそるおそる近づいて調べてみると、入り口の鉄扉の錠が腐っていることが分かった。
軽く押すと、すごい音をたててきしみ、開いた。
彼女にうながされて中にはいる。
本当に小さな灯台らしく、壁から突き出した石段が、上の部屋までらせん状に続いているだけで、他には何も見当たらない。

「ね、登ろ」
冗談ではない。幽霊かどうかは別にしても、こんな古い石段、いつ崩れるか知れたものではない。
そう言おうとする前に、彼女はさっさと石段を登りはじめていた。
思ったよりしっかりした造りらしい。
僕もやむなく後を追った。

石段を登りきると、かつては毎晩灯りが灯っていたであろう小部屋に出た。
周囲は窓ガラスもなく、ところどころ柱にさえぎられるだけで、あたりの風景が余すところなく見渡せた。


突然、周囲に閃光が走った。
それから一瞬だけ遅れて、ドーンという破裂音。
あまりのタイミングのよさに、僕はあやうく悲鳴を上げるところだった。

再度 光と大音声。
どうやら祭りの花火がはじまったようだ。
目を凝らすと、浜辺で ハッピとねじり鉢巻の男達が、威勢よく動いて花火を打ち上げているところさえ見えるような気がした。
僕らは寄り添うようにして、海辺に照り映える花火を、飽きることなく見つめた。



僕らはさびれた駅で、帰りの列車を待っていた。
今日中には街に帰らなくてはならないのだ。
幽霊ならともかく、現実の人間には、しなければならないことがある。
心霊ごっこは終わりだ。

だが、どうしても腑に落ちない点がある。
僕は駅員に聞いてみることにした。

「松林の岬にある灯台って、いつごろ取り壊されたんですか?」
「へ? ありゃあまだあのまま建ってるよ」
「でも話では、数年前に取り壊されたって…」
「ああ、そういう話もあったけどもね、取り壊すにも金がかかるし、ほったらかしてあるんだわ。
 かわりに お盆祭りを取りやめたんで、この時期はさみしくてねぇ」
「え、僕ら、昨日の晩に、花火を見たんですけど。浜辺から打ち上がってました」

とたんに駅員の顔がいぶかしげなものに変わった。

「あんたらもかい。毎年 盆祭りの晩になると、花火の幽霊を見たっちゅう人が絶えんでのぅ」
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by himaohimao | 2004-07-21 06:32 | ショートショート
2004年 07月 15日

遠い駅

第7回トラバでボケましょう! 参加作品

「発車しまーす」
朝っぱらから、やけに張り切った声がひびいた。車掌の声だ。
乗客はむっつりと黙り込んでいる。
いつもの光景だ。

突然、身体が引っ張られる感じがした。
急発進したらしい。乱暴な運転手だ。

電車はどんどん走って行く。
次の駅までは遠い。
他の乗客と押し合いながら、汗が噴き出してくるのを感じた。
乗客の顔にも疲れが見える。
まだだろうか。まだ着かないのだろうか。
これでは間に合わない。
冷や汗が、脇の下をつたう。
このままでは溶けてしまいそうだ。

「まもなくー 公園前ー 公園前ー」
ようやく目的地に着くようだ。
やっと電車を降りられる。

電車は、公園のすべり台の下の 土管状のトンネルに入り、止まった。

おれたちは なわとびのなわでつくったでんしゃを ほうりだすと 
さっき 「おかしのやまだ」で かってきた アイスを 
むちゅうになって たべはじめた。
だれも しゃべるやつなんて いない。
やっぱり アイスは おいしいなぁ。

それにしても 「おかしのやまだ」が もうちょっと こうえんの
ちかくにあれば いいのになぁ。



■□■□■□■□■□【トラバでボケましょうテンプレ】■□■□■□■□■□
【ルール】
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 審査は1つのお題に対し30トラバつく、もしくはお題投稿から48時間後に
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「お客さん、モミアゲの長さは、どのくらいにしときますか?」

「【普通】でお願いします! 【普通】で!」
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by himaohimao | 2004-07-15 22:12 | ショートショート
2004年 07月 10日

マグロ市海洋生物調査団の謎

第6回 トラバでボケましょう選手権 に参加したとき、話を2つ考えつきました。
結局、 こちらの話で応募したんですが、
書いたものはやっぱり皆さんに読んでいただきたく、授賞式も盛大に終わったことですし、もうひとつの話をトラックバックさせていただきます。


マグロ市中央魚市場には、大勢の人が集まり、かつてない喧騒に包まれていた。
見たこともない大きな生物が水揚げされたからである。

それは三角形をしているところから、一見、エイのようにも見えた。

「ずばり、これはエイでしょうね」

ダービッツ氏が言った。

「あんたなんでここにいるの」

知り合いの客が聞く。

「いやあ、最近 小型船舶の免許を取りましてね、漁師に転職したのですよ」


しかし、その魚の材質は、イカのようだった。

「ヌメッとした感触、無脊椎動物特有の構造、そしてなにより味がイカそのものじゃ」

「うわっ、博士、正体不明なものを切り取って焼いて食べないでくださいよ」

「食べてみねばペットフードの良し悪しは分からんものだ。君も一口どうかね」

「いえ、私は遠慮しておきます。それよりその七輪、どこから持ってきたんですか」

あくまで冷静なツッコミを忘れない助手であった。


しかし、そのエイのように見えるイカは真っ赤な色をしていた。

「乙女ちゃんでぃーっす。面倒くさいっぽ。アカエイイカってことにしときんしゃい」

こうしてこの生物の和名はアカエイイカということに決まった。


マグロ市では、さっそく調査団が組織された。

団長は博士。
調査員として助手。
操船係はダービッツ氏。
オッドマンとして乙女ちゃん。
そして猿。

調査船(ダービッツ氏の小型船)は早朝ただちに出航した。
なぜこんなに小規模なのかというと、こんなときのために用意されていたはずのマグロ市の補正予算が、
『使途不明金(花火代として)』という領収書とともに大幅に消え去っていたからである。


調査船は、丸1日かけて問題の海域に着いた。

助手「博士、夜になってしまいましたね。調査は明日からにしますか」

博士「ばかもん。イカは夜行性なのじゃ。しかも集光性がある。ただちに探照灯を点けるのじゃ」

ダービッツ「探照灯なんてありませんよ。ただの漁船なんですから」


そのころ、乙女ちゃんは舷側で嘔吐していた。

乙女「吐いてる理由? 決まってるっしょ。紫外線よけに頭グルグルしてたらこうなったっちょ」

「生物層とは、グルグル回る輪廻の輪のようなものだ」
と猿。


そのとき、海が赤く光り始めた。と同時に、捕獲され、船倉に保管されているアカエイイカも光りだした。

博士「このまま進むのだ。宇宙は人類に残された最後のフロンティア」

助手「ここ海なんですけど」

ダービッツ「ワープエンジンなんてありませんよ。ただの漁船なんですから」

乙女は赤い光に酔いしれた藤原紀香のように踊り狂っていた。

「人生はダンスを踊り続けているようなもの。踊りをやめる時、人生も終わるのだ」
と猿。


海面の光はますます強くなり、あたりは真っ赤に染まった。
よく見ると、波間から赤い三角の物体が多数突き出している。

助手「博士、アカエイイカです。アカエイイカの大群ですよ!」

博士「見て分からぬ者は聞いても分からん」

ダービッツ「博士、分からないんですか」

乙女「ムヒーッ、もうサイコーキネシス テレパシー 超能力をー使うときー」

「思わぬときに門外漢が役に立つ。そのためのオッドマン」
と猿。

乙女「来たわよ来たわよ。アカエイイカを2枚におろすんだぎゃあ」

博士「なんと、乙女君はアカエイイカからのテレパシーを受信しているのかね?」

ダービッツ氏が素早く船倉に下りると、包丁を取り出してアカエイイカを薄く2枚に開いた。

アカエイイカの体内は真っ白く、内臓も骨格もなかった。ただあったのは、

 『当たり 一等』

の文字だけ。

乙女「おめでとうっちゃ。賞品は、銀河一周鉄道の旅じゃけん」

「これで若き日に分かれたカムパネルラに会えるかもしれない」
と猿。


漂流しているダービッツ氏の船が発見されたのは、それから1週間後のことだった。
発見者の「豪腕のマリー」の名で呼ばれるベテラン女漁師によると、船内には誰もいなかったという。

アカエイイカの残骸は、マリーさんが捨ててしまったとのことで、研究者たちをおおいに落胆させた。
彼女いわく、「だって、あんまり臭かったんですもの。」

それ以来、この謎の事件は、『マリーそれ捨て豪』事件として広く世間に知れ渡ることになったのだった。
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by himaohimao | 2004-07-10 22:56 | ショートショート
2004年 07月 09日

マグロ探検隊の冒険

第6回 トラバでボケましょう選手権 参加作品


俺の船は危険な海域に足を踏み入れていた。
霧が立ちこめ、視界がほとんど効かない。
海底に火山でもあるのか、海水が熱いのである。
俺は額から汗をぬぐい、船を見渡した。
この暑さで、乗組員たちの疲労も限界にきているようだ。
そのときだった。

「船長! 滝です! 前方に滝が見えます!」

見張りが叫んでいる。そんなバカな。ここは海だぞ。
船首の方角に目をやると、巨大な滝が流れ落ちていた。
熱風がここまで押し寄せてくる。どうやらあの滝は煮えたぎっているようだ。
俺は叫んだ。
「とり舵いっぱい! 滝を回避する!」
「アイアイサー!」
ベテラン操舵手が即座に反応する。
彼の熟練の技によって、船は転覆ギリギリの角度まで傾きつつ、滝を回避した。

水温はさらに上昇してゆく。このままだと乗組員が保たない。

「船長! 船長!」

今度は何だ。

「左舷に! 左舷に!」
「どうした! しっかり報告しろ!」
「巨大な鳥が!」

どうやら見張りが この暑さの最初の犠牲者となったようだ。それでも一応 左に目をやると、
「!」
本当に 巨大な水鳥らしき物体が浮かんでいるではないか。
まるで太古の水竜、プレシオサウルスのような大きさだ。
いくら水鳥とはいえ、あの大きなクチバシで突かれでもしたら船体に穴が開いてしまう。

「おも舵いっぱい! と、鳥、あの鳥を回避する!」
「アイアイサー」
さすがは俺とずっと一緒にこの船に乗り組んでいる操舵手だ。
俺があわてていても、表情ひとつ変えずに舵輪をまわす。


まてよ。俺たちはいつから一緒にいるのだ?
いつからこの船に乗り組んでいるのだ?
見張り、操舵手、航海士、船員たち、そして船長の俺。

毎日出航していることだけは覚えている。
今日も船出は順調だった。
そして毎日帰港して・・・ 帰港? どこへだ?
記憶が曖昧だ。このむせかえるような暑さのせいだろうか。
俺たちはどこへ帰港するのだ。どこへ。


そのとき、ものすごい勢いで船体が上昇し、左右に揺さぶられた。
船員たちが甲板を滑ってゆく。
揺れは激しさを増し、船は振り子のように揺さぶられた。
このままでは船員たちが振り落とされてしまう。
仲間を助けなければ。
舵輪にしがみついている操舵手を残し、俺は甲板に出ようとした。
その瞬間、今までで一番激しい衝撃が襲ってきた。
船体が投げ飛ばされ、岩盤に叩きつけられたのだ。
俺も船室の壁に頭を強く打ちつけてしまった。
薄れ行く意識の中で、遠くに 女と子供の声を聞いたような気がした。

「あらあら、お船のオモチャ、放り投げちゃダメでしょ」
「やーだ! もうお風呂あがるもん」
「じゃあ、ママがお湯を止めるから、アヒルのオモチャも片付けてしまいましょうね」



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by himaohimao | 2004-07-09 12:41 | ショートショート
2004年 07月 07日

竹の子の日

朝、目がさめたら、頭の横に大きな竹の子が生えていた。
目を閉じて、また開いてみた。やっぱり竹の子だ。
それも大きくて立派な竹の子が、畳を突き破って生えているのである。

僕は思った。なぜ2階建てアパートの201号室に住んでいる独身花嫁募集中のこのオレの部屋に、
竹の子なんかが生えているのかと。
201号室。そう、僕の部屋は2階なのである。これは1階から生えてきたものに違いない。
そうだ。階下の様子を見てこなければならない。
そして事と次第によっては、文句のひとつも言ってやらねばならない。
アパートは人が住むところであって、竹の子を栽培するところではないはずだ。

急いでパジャマを脱ぎとばし、綿パンとシャツを着る。
サンダルをつっかけてドアを開け、廊下へ出たところで 隣の部屋の前でオロオロしている人影が見えた。
女性のようだ。
すぐに僕は顔中に「花嫁募集中」の笑みを浮かべると、彼女に近づいていった。

「あらっ、雅彦君」
雅彦とは僕の名前である。
今まで一度も顔を合わせたことがない隣の部屋の住人から、なぜ君づけで呼ばれなくてはならないのか。
不思議に思って相手の顔を見ると
「おや、詩織ちゃん」
僕が1年前まで勤めていた会社でOLをしていた女性である。
同期入社だったが、物静かであまり目立たない子だったので、特に親しく話したことはなかった。

「あの、雅彦君」
また呼ばれた。顔を見直すと、なにかにおびえているような表情をしている。
「あ、あの、あの」
何か言いたそうだが言い出せないという風情。僕は冗談めかして言った。
「もしかして、部屋に竹の子でも生えたのかい?」
「そう、そうなのよ!」
なに!? 自分の部屋だけでなく、隣の202号室にまで竹の子が生えていたとは。
聞いてみると、状況は僕の部屋とほとんど同じのようだった。

「よし、下の部屋の様子を見に行こう」
かねてからの僕の提案に、彼女はうなずいた。

階段を下りて101号室をノックする。返事がない。
ためしにドアノブを回してみると、ドアはするりと開いた。
「!」
僕と同じ6畳の部屋の、僕の部屋と同じ位置に、見事な青竹が生えていたのである。
そしてそれは天井を突き破り、僕の部屋に向かってまっすぐに伸びていたのだ。

他の部屋も調べてみたが、状況は同じだった。
このアパートの住人は、僕ら2人を除いて、いなくなっており、かわりに竹の子というか竹が生えていたのである。

「雅彦君、これからどうするの?」
詩織が聞いてくる。
「し、し、詩織ちゃんはまだあの会社に勤めているのかい? そしたら会社にも連絡しなくちゃいけないし、
親御さんなんかもホラ、し、し、心配してるといけないから」
突然の質問に、トンチンカンな返事をしてしまう。
そうだ。僕も会社に連絡しなければ。
まっさきにそう考えてしまうところが宮仕えの悲しさである。

僕はいったん部屋に戻り、携帯電話を取ってくると会社に電話した。なぜか詩織もついてきた。
何度発信音を鳴らしても、誰も出ない。
もう9時近いのに、誰も出社していないなんて、普通では考えられないことだ。
「詩織ちゃんの方はどう?」
彼女は僕の携帯を使った。どうやら自分の部屋に戻って竹の子と対面するのが怖いようだ。
何度か電話をかけた後、彼女は首を横に振った。
「そうか…」

僕らはしばらく話し、外に出てみることにした。あたりの様子を見てまわる以外に、いい案を思いつかなかったのだ。
駅に向かって歩く。普段なら勤め先に急ぐ人の群れで一杯のこの時間に、人っ子1人いない。
車も1台も動いていない。
駅の中も見てみたが、誰もいなかった。
このうららかな日差しの中、動いているものの影はなく、体験したことのない静けさが僕らを包んでいた。

公園のベンチに座って、遅い朝食を食べながら、僕らは途方にくれていた。
食べ物や飲み物は近くのコンビニで手に入れた。お金はカウンターに置いてきた。
「いったいどうなっちゃったの?」
「それはこっちが聞きたいよ」
さっきから何度も同じ会話を繰り返している。
あたり中のドアというドアをたたいてまわったが、無駄だった。
反応がないか、たまに鍵が開いていても、中には竹が数本生えているだけ。
徐々に日は傾いていく。

「そうだ!」
昼食を摂ったあと、ふいに思いついた。
「このへんで、一番高いところに登ってみれば、何か分かるんじゃないかな?」
「一番高いところって…」
詩織があたりを見回す。
「あの山、かしら?」
数キロ先に、小高い山が見えた。ちょうどお椀を伏せたような形で、丘といったほうがいいような小さな山だ。
宅地造成の波に取り残されたように、そこだけ緑が残っている。
「よし、行こう!」

道々、僕らはお互いのことを話した。話すことはたくさんあった。
僕が転職した理由、彼女はまだ前の会社で働いていること、同期入社時の研修であったハプニング。
そして2人とも、恋人と言えるような人はいないこと。
しかし共通の知人や身内の話は2人とも避けていた。
彼らが今この瞬間どうなっているのか、考えるのが怖かったのだろう。

日が西に傾いた頃、僕らはその山の頂上に立っていた。
そこから見下ろすと、さして大きくないこのベッドタウンを一望できた。
なんの変哲もない町の風景。だが、そこには何の動きもなく、横にいる詩織の呼吸さえ聞こえるほど静かだった。

不意に詩織が僕の腕につかまってきた。
「これから、どうなっちゃうんだろう」
僕に答えられるはずもない。
僕は救いを求めるように、あたりを見回した。

竹林の奥に、小さな神社というか、社が建っていて、なにかの神様が奉られていた。
僕は詩織をうながして、社を調べ始めた。
古い社で 最近は手入れもされてないらしく、荒れ放題だ。
ご神体を祭っている祠の扉もはずれてなくなってしまっている。
覗き込むと、薄暗いなかに、円錐形の物体が安置されていた。
見ようによっては、竹の子にみえなくもない。
そのあまりにホコリだらけの姿を見るに見かねて、僕はポケットティッシュでそれを拭いた。
作業に集中していると、横からハンカチを持った白い手が伸びてきた。
詩織だった。
「むこうで手水処を見つけたのよ」
ハンカチは水に濡らしてあった。
僕らはしばらく、祠の掃除に熱中した。

その最中、祠のすみにお札が2枚置いてあるのを見つけた。不思議なことに、お札はホコリをかぶっていなかった。
厚手のお札ではあったが、しょせんは紙製。風に飛んでしまわなかったのは奇跡のようなものだ。
1枚を詩織が手に取る。
残りの1枚を手に取って調べてみた。見たこともない文様が描かれており、上端にヒモのようなものがついている。
絵馬のようにぶらさげて奉納するのだろうか。
ふと横を見ると、詩織がお札を持ったまま、目を閉じている。
その姿は なにかを熱心に祈っているようにもみえる。
僕も沈み行く夕日を見ながら、いつしか心の中で、ある願いを唱えていた。

「そういえば、今日は七夕だったね」
われながら陳腐な思いつきではあったが。
「このお札、近くの笹に結んだらどうかな」
このアイディアは、思いもよらぬ歓迎を受けた。
「あら、素敵な考えね」
僕らは2人で一緒にお札を笹に結びつけた。
そのとたん、世界がグラリと揺れたような気がした。と、僕は気を失ってしまった。


日もとっぷりと暮れ、星がまたたく山道を、僕たちは手をつないで降りていた。
眼前には住み慣れた町の明かりが煌々と灯っている。
自動車の走る音がする。もうじき人々の喧騒も聞こえてくるだろう。
さっき詩織が何を願ったのか僕は知らない。
だが、あのお札を2人で一緒に近くの笹に結びつけたとき、何かが変わったことだけは間違いない。
僕は夜空を見上げた。
晴れ渡った夜空に、天の川がくっきりと見えた。
織姫と彦星は1年に1回の邂逅を無事にとげていることだろう。
そして1年ぶりに出会った僕たちも。
傍らの詩織を見る。彼女もこちらを向いて、微笑んだ。その笑顔に向かって問いかける。
「さっき、何をお願いしたんだい?」
「ふふ、秘密よ。あなたこそ何をお願いしたの?」
問い返されて少し焦る。
「きっと、君と同じことだよ」
照れ隠しに再び夜空を見上げると、星たちは優しくまたたいていた。
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by himaohimao | 2004-07-07 00:12 | ショートショート