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2004年 07月 23日

おつかい

【第8回トラバでボケましょう!】 参加作品


「さあ、お弁当ができたわよ。パパに届けてきてちょうだい」
ママがぼくに言った。
「はい、こっちがあなたの分よ」
「わーい、これだね。行ってきます!」
ぼくはママからお弁当と飲み物を受け取ると、家を飛び出した。

パパが働いているところは遠い。
だけどまだ朝ごはんがすんで、パパが出かけてからそんなに時間が経ってない。
寄り道しても、お昼までにはじゅうぶん間に合う。

ぼくはいつもの場所に行ってみることにした。


やわらかい草地を踏みしめながら歩く。
前にいたところは こんなに地面がやわらかいところはなかった。
外を歩いても咳が出ない。ホコリが少ないせいかもしれない。

「ここに引越したのは、あなたの体のためでもあるのよ」
ママの言葉を思い出した。
たしかに、ここに来てから体が軽い。あんなにいつも疲れてばかりいたのが嘘のようだ。
ぼくは走った。まるで羽根でも生えたかのようにビュンビュン走れる。
心臓がドキドキして、呼吸が速くなるのさえ気持ちいい。

草地を横切り、森を抜けるといつもの場所だ。
大人からは、ここに来ちゃいけないって言われてるけど、ぼくはよくここに来る。

ここの地面は固い。前にいたとこみたいに。
ここの建物はぼくの家より大きい。だれも住んでいないけど。
「廃墟」って言うんだと、パパは教えてくれた。
「こんな田舎だもの、しょうがないわよね」
とママが言っていた。

古くなった建物に入っちゃ危ないってことは知っているので、ぼくは外の壁にもたれて休んだ。
一人で静かにしていると、いろんな音が聞こえてくる。
風の音、虫の声、鳥のさえずり。
ぼくはこの音が好きだ。この風が好きだ。この場所が好きだ。
そして生き物たちが好きだ。
だって前の所にはいなかったんだもの。


太陽が高く登ってきた。そろそろ行かなくちゃ。パパが待ってる。
ぼくはまた走った。森を抜けて草原に戻り、パパのところへ。

息が切れて走れなくなって、のんびり歩いているうちに、パパが働いているところに着いた。
ぼくの姿を見つけて、作業していたパパが手をふった。
「おーい」
ぼくも叫ぶ。
「お弁当もってきたよー」
「そうか。じゃあお昼にするか」
「うん」
パパのとなりに、ぼくも座る。ぼくらは、ママが作ったお弁当を取り出して、2人で一緒に食べた。

「パパ、おいしかったね」
「そうだな。ここは空気がいいからな」
微笑んでパパが言う。
「お前はここが気に入ったようだな」
「うん、大好きだよ。パパはちがうの?」
「そうだなぁ。ときどきは、前に住んでた所が懐かしくなることもあるなぁ」
パパは空を見上げて言った。ぼくもつられて空を見る。

「パパ、どうして空が青いの?」

パパは真っ赤な3つの目でぼくをじっと見て言った。
「それはね、この星の大気の成分が、私たちの母星とは違うからなんだが、お前に分かるかなぁ」
そう言うと、パパは3本目の腕で、ぼくの頭をなでた。

「さ、もうひと働きしなくちゃな」
「ぼくも手伝うよ」
ぼくらは一緒に立ち上がると、移民してきた惑星を開拓するべく、環境改造マシンの方に向かって歩きはじめた。
パパがポツリとつぶやいた。

「パパはやっぱり、空は赤い方が好きだなぁ」


■□■□■□■□■□【トラバでボケましょうテンプレ】■□■□■□■□■□
【ルール】
 お題の記事に対してトラバしてボケて下さい。
 審査は1つのお題に対し30トラバつく、もしくはお題投稿から48時間後に
 お題を出した人が独断で判断しチャンピオン(大賞)を決めます。
 (自分自身のお題の記事にトラバして発表)
 チャンピオンになった人は発表の記事にトラバして次のお題を投稿します。
 1つのお題に対しては1人1トラバ(1ネタ)とします。
 お題が変われば何度でも参加OKです。
 (企画元ブログにてチャンプランキングも開催中!)

 企画終了条件は
 みんなが飽きるまで、もしくは企画者が終了宣言をした時です。

 参加条件は特にないのでじゃんじゃんトラバをしてボケまくって下さい。

 ※誰でも参加出来るようにこのテンプレを記事の最後にコピペして下さい。

 企画元 毎日が送りバント http://earll73.exblog.jp/
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by himaohimao | 2004-07-23 00:37 | ショートショート


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