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2004年 08月 13日

『ヴァイラス』

『ヴァイラス』_a0032792_1137455.jpg
昨夜、木曜洋画劇場で、SFホラー映画『ヴァイラス』(99年 アメリカ)を観ました。
その感想を書きますね。一言で言うと、


       この映画、惜しい!


B級映画にしては予算が豊富なようで、特撮技術的にはB級水準を充分クリアしてるんです。
なのにイマイチ面白くない。
ここでは、なぜ面白くないのかを検証してみようと思います。

冒頭だけ紹介すると…

  電気状のエイリアンがロシアの宇宙ステーション ミールを襲い、制圧。
  当時、ミールと交信していたロシアの通信・研究船を、通信電波に乗って制圧。
  漂流船と化した研究船を、アメリカの貨物船が発見。
  貨物船は台風で沈みかけていたので、助けてもらうつもりで接近、乗船。
  当初無人と思われた研究船だが、中で何かが動いていた…

というものです。

怪物がいる幽霊船に乗り込んでいく映画はたくさんあります。
『エイリアン』シリーズがその代表作でしょう。
このジャンルは、それだけ面白いんです。作りやすい割には。

ではなぜ『ヴァイラス』がイマイチ面白くないのか。

設定と、脚本と、演出がマズいからです。


***************ここからは、ネタバレになります********************


まず、登場人物が多すぎます。

貨物船に、7人くらいの乗組員がいるんですが、各人の個性が描き分けられないうちに
幽霊船に乗船することになります。

なぜこういうことになったのか。原因は2つほど考えられます。

ひとつには、エイリアンは生体部品を欲しがるので(なんで?)、
エイリアンのパーツにさせられてしまう犠牲者が必要だったため。

もうひとつは、映画の2時間枠でも一杯一杯だった話を、テレビ放映のために
1時間半強に縮めてしまったためです。

映画館では導入部のキャラクター描き分けに、もう少し時間を割いていたのかもしれません。
もしそうならば、これはテレビの都合ですから、この映画のせいにするのは可哀相ですよね。

ところが、序盤に、ひとりのキャラが、全員の性格について話すシーンがあるんです。
「あいつは欲張りだが、あいつは信用できる」
てな具合に。
これは、製作者側に、キャラ紹介を劇中でする意思がないということです。
ノーカット版も期待薄だと思われます。


次に、キャラクター達に魅力がありません。

クレイジーな船長に、ドナルド・サザーランドを起用しているのですが、
せっかくの彼の魅力を引き出せていません。

他の乗組員も同様で、主人公のヒロインは、『エイリアン』のリプリー(シガニー・ウィーバー)を
イメージしているんだと思うんですが、リプリーの「しっかり者」の部分を演じるのに精一杯で、
「実はやさしくて繊細」な部分をあまり表せていません。

他の乗組員も、ガラが悪すぎます。
いえ、荒っぽいのはいいんです。ただ、欲ばりで、いがみあってばかりいるって所がどうもねぇ。

ラスト近くでロケット弾を使う、ミリタリーマニアっぽいキャラも出てくるんですが、
そのことに関する伏線も一言しかありませんしね。


そして、怖がらせ方がなってないです。

暗く、静かなシーンに、いきなり、思わぬ方向から怪物が襲ってくるから怖いのです。
お化け屋敷が明るくて、お化けが向こうの方からゆっくり近づいてきても、あんまり怖くないでしょう?

ところがこの映画は、ブリッジに運び込まれたケガ人を治療中に、行動方針について議論が交わされ、
あわや喧嘩になりかけたところで、エイリアンが扉を開けて乱入してくるのです。
まるで仲間割れしかけた乗組員を団結させるために襲ってきたかのように。
実際、僕はこのシーンでホッとしました(笑)

これが必死に逃げたあげく、ようやく見つけた安全そうな場所で 一息ついているところに、
エイリアンが窓ガラスを破って船外から来襲、とかだったら、もうちょっと怖かったと思います。

襲撃は全編このパターンですから、監督が分かってない としか考えられません。


そして、ケガした人が痛がりません。
いや、最初のうちこそ「痛い痛い」とうるさいんですが、ちょいと治療してやると、
ケガなどしなかったかのように動き出します。
刺さった鉄の矢を抜いてやるだけでもいいんですよ。

ついには、右肩に敵のネイルガンを打ち込まれた乗組員が、みんなのところに戻ってきて、
右肩に担いでいた大きなバックを降ろしたのに至っては、思わず爆笑してしまいました。


SF味も足りません。

一応、SFホラーなんですから、ある程度整合性のある設定が欲しいものです。
ホントに、ある程度でいいですから。

この場合、舞台は徹頭徹尾、現用の研究船ですから、セットに問題はありません。
研究船といえども普通の船ですから、船体の構造も、だいたい分かります。

問題なのはエイリアンの設定です。

彼(彼ら?)は電気状の生命体です。
で、電力の供給が必要です。食料みたいな物なんでしょうね。

そのために、研究船のコンピュータを乗っ取って、機械工作室で機械の体を作らせます。
蜘蛛型の小型ロボットです。お尻から電線が伸びてます。切られると動きが止まります。
ここまではOKです。

次に彼はコンピュータから人間の医学情報を学び、人間を殺して生体部品に使おうと考えます。
さあここが分からない。

人間用に作られた船ですから、人間型の方が動きやすい。これは納得できます。

納得できないのは、なぜ生体部品が必要なのかという点です。

脳をコンピュータとして使うというのは分かります。
人の脳は、スーパーコンピュータでもかなわない、優れた部分を持っていますから。

でも、胸が剥き出しってどうよ。
服を着た上から機械を植え込んであるってどうよ。

これって「メカゾンビ」を登場させたくて作ったとしか思えません。

こいつらが登場するにいたって、電線につながっていないと即座に停止する、という設定は、
どこかへ行ってしまいます。
人間型のエイリアンは、ドンドンドンドン追いかけてくるのです。
ここは、遠くへ移動するために、電源ケーブルを繋ぎ変えるエイリアン、というシーンを入れて欲しかったところです。
ほんの1カットで済むんですから。

そして人間の側も、それに気づいて電源ケーブルを切断する作戦に出ると面白くなったのに、と残念です。


最後にラスボスとして 大型の機械型エイリアンが登場するのですが、
この大きさでは船内の移動が大変でしょう。
しかも生体部品など、影も形も見当たりません。

こんな大艦巨砲主義的なものを作るなら、人型のヤツをたくさん作ったほうがいいに決まってます。
エイリアンクイーンのマネがしたかったんでしょうか。


まあラストはお定まりの脱出劇で終わるんですが、なんというか、
せっかくの予算を無駄遣いしたな、というか、あちこちイジれば面白くなったのにな、
と思わされてしまう映画でした。

監督、脚本、編集に、もうちょっとづつ才能と実行力(と時間と環境?)があればよかったんですがねぇ。


追記:後日 改めて考えてみたんですが、これ、2時間映画にしては話がてんこ盛り過ぎですね。
    尺をあと30分増やすか、エピソードを減らすとかなり良くなったろうと思われます。
    にしても、演出のマズさは変わらないんですけどね。

by himaohimao | 2004-08-13 11:39 | 映画


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